ハミだし葉

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12月のよかったもの

先月はこちら

●vewn『楽園のふたご』(Twins in Paradise)


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YouTubeで公開されてる個人製作アニメなのかな?(英語読めないので詳細はわからない)

大体10分くらいで日本語字幕もあるので見やすいと思うんですが、めちゃくちゃ面白い。あまりにも強い衝撃を受けて続けざまに3回見たし、今もこの作品のことばかり考えている。

まず、この強烈なビジュアルに魅かれた。いわゆるカートゥーンっぽい絵柄のデフォルメと色使いに手描きのタッチが個人的にすごく好みで、一見シンプルな絵柄だけど背景の描きこみもすごいんだよなあ……。

情勢が不安定な世界でテニスプレイヤーをやっている双子の姉妹の話なんですが……以下は若干のネタバレも踏まえた感想なので、もし少しでも興味があればまず見てほしい!10分ないので!!




冒頭、爆発を映すニュースから自身の決勝進出報道に『マーシー』がチャンネルを切り替えるところからはじまる。作品のテーマとか考察とか解釈だとか、そんなものを自分が語ってしまうのは烏滸がましいくらいなのだけれど、この冒頭シーンはこの作品を象徴していると思う。

これはあくまで、母を亡くした双子の姉妹『マーシーとダーシー』の物語。精神的に不安定な時期の子供が、自身の才能や容姿を仕事道具として使う中で消耗しすれ違っていく。物語の根幹はそうなのだと思う。

しかし、この作品をただの多感な子供の苦悩で終わらせてないのが前述の社会情勢の不安定さだ。マーシーとダーシーが決勝に向けてそれぞれ時間を過ごす中で、合間に映し出されるのは世界の終末をにおわす不穏なニュースや暴動を起こす大人たち。そんな世の中のことはなにも知らないかのように、2人が抱える問題は一貫して『自分自身』と『姉妹』に向けられている。

冒頭、マーシーは世界情勢のニュースには目もくれず自分たちのニュースに切り替えてしまう。決勝進出が心から嬉しそうなマーシー、ぎこちない表情を浮かべるダーシー。自分がこの作品を見て感じたものは、この数秒にも詰まっていると思った。

そして映し出されるのは一見正反対な双子の生活。マーシーが決勝までの時間を指折り数えて早めに就寝しているのに対し、ダーシーは暗い部屋で夜更かしに明け暮れる。レッスンの間もダーシーはどこか上の空で、そんなダーシーに『コーチ』恐らく精神安定剤を渡す……このシーンのなんと無責任で腹立たしいことか。2人のすれ違いはこの薬によって加速していく。問題なのはダーシーだけではない。練習に打ち込みながらもどこか不安げなマーシーも、心の中では葛藤が戦っていた。

2人の感情が高ぶるつれ、赤みを帯びていく世界。訪れる終末……。

この残酷な物語は、引きで見れば常に社会や大人によって振り回される子供たちの悲劇というような世界中といえる規模の大きな問題だが、クローズアップすればするほどものすごく個人的なことで完結している。

だからこそ2人が手を取り合って軋轢を乗り越えた瞬間訪れるラストが衝撃的で……2人の運命は最後まで社会の掌の上にあったということが言葉を失うほど悲しくやりきれない。どこか美しさも感じさせる終わりだが、この物語を美しいと感じる気持ちはここ数年、まさに大人や世界に搾取される子供たちが現実にも多くいることを知って失われてしまったように思える。しかしこの深い余韻こそ自分がこの作品を好きだと思える一番の要因だ。

色々と講釈垂れてしまったけれど、とにかく切ないのだ。作中、薬でトリップして見る幻覚はポータルとして表現されている(と思ってるけど違うかも)のだけれど、その中でダーシーはマーシーを思わせるピンクのウサギとマーシーはダーシーを思わせるブルーのネコと一緒に過ごすことになる。豪邸に住みながらレッスン以外の時間は別々に過ごしている姉妹だが、それだけで本当は一緒にいたいということが伝わってギュッと胸を締め付けられた。そのうえでダーシーは遊ぶことを、マーシーはテニスをすることを望んでいるからこそ2人のすれ違いはそこからはじまったこともわかる。ウサギと共に巨大な母の手に抱かれながら『ここが大好き。ずっといられたらな』と呟くダーシーも、ダーシーと共に決勝のコートに立つ(そして優勝する)という夢を最後は自分自身の分身に壊されるマーシーも、とても悲痛だ

そしてマーシーが現実へ帰ってきたのと同時に響き渡る無機質な警告音……この作品はとにかく演出もすごい。物語が進むにつれ鮮烈になっていた赤色が、最後のシーンで真っ白に戻るのもリセットを思わせてとても好き。だからこそ、2人が手を取り合っただけでは変えられない終わりがとても残酷なのだけれど……。本当にすごく面白くて、心に残った作品だった。2023年に見たものの中でもトップクラスに感動したと思う。


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▲それからBGMも良い!!この曲とか特に好き


●Mili『RTRT』


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Miliさん自体は以前から存じていた(一時期Rayark製音ゲー好きだったので)けれど、ちゃんと曲を聞いたのはほぼ初めてで、めちゃくちゃ好きな感じだったのでちょっと驚いた。

英語詞ということでしばらくはあえて訳を見ず聞いてから後日訳詞と映像含めて改めて聞いたんですが、全体的にすごく好きだ。イントロから心つかまれたし、わかりやすいチャイナ感だけどどこか現代的というか。なんて表現したらいいんだろう。ファンタジーのチャイナの中にちょっと今っぽさがあるというか……サイバーチャイナの手前みたいな雰囲気。近未来的でもあるのかな。

ボーカルの人の少し幼さのある歌い方もめちゃくちゃ良いし、訳を見なくても耳心地のいい英語のテンポよさがあって聴いてると楽しい。特に『Since I'm the mad scientist, proclaimed by myself』ところすごく気持ちいい!

ストーリーも、キョンシーの話だけどホラーじゃないのがいいし、イラストと合わせて無邪気な怪物と2人暮らししてる生活感ある世界観なのも好き。

●橋本ライドン『妹・サブスクリプション

橋本ライドン先生の新作だあああああ!!!!!実は最初はほのぼの姉妹ものかと思って食指が伸びてなかったんですが、進めば進むほどあれ……?となっていく。相変わらず不穏の匂わせ方がすごく上手い……!!『妹サブスクリプション』というタイトルの意味が分かるころには更新ごとに手に汗握るようになってしまう。

特に今やってる今日子の過去編は読みながらうわ~~~!!!となってしまった。

先がどうなるか全然わからないし、平穏に見えてずっと爆弾抱えてるみたいな作品なので一緒に手に汗握ってください。#妹サブ で毎日21時更新です。


●雨穴『変なAI』

雨穴さんの記事は以前からオモコロの方でよく見ていたんですが、それゆえに動画の方はスルーしてたのを最近見始めたんですけど、動画版も良いですね。

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記事の内容を知っていても音声と映像で見るとゆっくり内容を理解できるし、雨穴さんの声もかわいい。

なにより、動画で見ることによって構成のすごさが更にわかった気がする。すごい。ホラーだけどびっくり要素はなくて全体的にまったり進むのも良い。


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あと曲も作れるのなんなの。怪の方は雨穴さんの雰囲気らしい日本ホラーで、まさに怪って不気味さがクセになるけれど(メロディーがめちゃくちゃキャッチー)さらば、さすらいの人みたいな引き出しもあるのが尚更すごい。どういうジャンルと説明したらいいかわからないけれど、こういう王道な?ストーリーも出せるんだ……そしてコラの馬に乗りモップ(?)を振り回すあくまでも全部自分でやるスタイルのMVで笑ってしまった。


●他に見てたもの


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▲なぜか(主にKYS動画研究所のせい)にんげんっていいなのパロディばかり見ていた気がする。そしたらオリジナルのにんげんっていいな自体めちゃくちゃ面白くなってきた。この曲を当たり前に聴いてた子供時代が不思議



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アーバンギャルドの曲も色々聞いていた。この世界観、一度ハマると抜け出せない